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2019年5月15日

ASMRの不思議な世界。音を聞いて感じる脳のメカニズムの科学的見解。

ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)はとても奇妙な現象と言われている。
ASMRを体験している人は、ASMRのことをこう表現する「首のうしろをくすぐられたときのようなむず痒さ」。

youtubeにはASMRの動画が数百万件アップされており、
ASMRを引き起こすトリガーとなる音を奏でる”ASMRtist(アズマーティスト)”が数多くいる。

ASMRはトリガーによって引き起こされるカラダの反応のことを言うのだが、
実は、ASMRがなぜ起こるのか、どういう効果があるか学術的根拠があまりない。

今回は科学的な観点でASMRはどう解釈されているのかご紹介いたします。

項目

  1. ASMRネットユーザーに発見された心理現象?
  2. アンケート調査が示すASMRの数字
  3. 精神面においてASMRはどう影響しているのか?
  4. ニック・デイビス博士が言うには
  5. さいごに

 

ASMRネットユーザーに発見された心理現象?

ASMRの心理現象が言語化されたのは2007年。
ウェブサイトSteadyHealth.comIsItNormal.comに投稿された「奇妙なセンセーションは心地が良い」というタイトルの内容が反響を呼んだ。

ユーザー「okaywhatever51838」が投稿した内容を一部ご紹介。

「時々センセーションを感じるの」
「学校の先生がマーカーで手に絵を書いてくれた時」
「一人で座って何もしていない時に感じる」
「肌に触るか触らないかぐらいのところで指から腕へかけて撫でるのが好きなの涙が出ちゃうくらいのセンセーション」
「これって何??好きだからなんなのか知りたい。。。助けて。」

2008年に「Society of Sensationalists」というYahooのグループができ、人々は囁き声などの動画をつくりはじめていた。
この時、”ASMR”という用語はまだ存在していなかったため、AIHO (attention-induced head orgasm) やAIOE (attention-induced observant euphoria)などとコミュニティ内で呼ばれていた。

ASMRという言葉は2010年Jenn Allenという人物によってつくられた。
そして、徐々にASMRという言葉が定着すると、その人気は爆発的に伸びたのだ。

こうしてインターネットによって定着した「ASMR」に
当時、注目していた研究者はほぼいなかった。

2015年世界で初めてASMRの研究論文がマンチェスターメトロポリタン大学のニック・デイビス博士とその同僚エマ・バラット博士により発表された。

研究の目的は2つほど。

個人差により誘起されるASMRのトリガーを解明すること
ASMRがうつ病や慢性疼痛の症状に効果的なのか調査すること

調査は、男性245人・女性222人・ノンバイナリージェンダー8人の計475人を対象に、
質問形式のアンケート調査を実施した。
※アンケート参加者はネットのASMRコミュニティなど何かしらASMRに興味を示している人が対象。

実際にどういった結論だったの箇条書きしていきます。

アンケート調査が示すASMRの数字

ASMRはリラックス効果があると回答した人の割合は98%

ASMRは寝るために使っていると回答した人の割合は82%

ASMRをストレス解消のために使っている回答した人の割合は70%

ASMRを性的欲求を満たす目的で使っていると回答した人の割合は5%

どのトリガーがASMRを感じやすいのか?

アンケート調査を実施した475人中半数の人がASMRを感じると回答したトリガーは以下4つだった。

囁き声(75%)
個人的に興味のあるもの(69%)
クリスピーな音(64%)
ゆっくりとした動作(53%)

また、何回も繰り返されるタスクがASMRトリガーとなったユーザーは34%だった。

ASMRを体験するときの環境は重要?

52%の人が「YES」と回答。
ASMRを感じるために静かで落ち着く環境を好む。
また、バイノーラルヘッドホンで深みのある音を楽しむ。

最初にASMRを感じたのは5歳と回答したユーザーは65人。
241人は、5歳〜10歳の時にASMRを体験したと回答。
41人がASMRを18歳のときに体験したと回答。

精神面においてASMRはどう影響しているのか?

80%の人がASMRは「ムード(気分)」をポジティブにしてくれると回答、
14%の人はよくわからないと回答、6%の人は特に影響しないと回答。

35人の慢性疼痛対象ユーザーがASMRによって症状が改善したと回答。
13人はASMRによる効果がわからないと回答、40人はASMRが症状に効果的だと感じられないと回答。

ニック・デイビス博士が言うには

ニック・デイビス博士は数多くのメディアに登場するASMRを研究する数少ない研究者。
NETFLIXのドキュメンタリー「世界のバズる情報局ー快感を届ける者たちー」にも登場しているのだが、その際ASMRの脳科学的な反応についてこう言及している。

「ASMRを体験する人としない人をMRI検査したところ、ASMRを体験している時人の脳のネットーワークの使い方が異なることがわかった」

ただ、研究についてはまだ未熟で結論付けることは難しいと発言。

さらに、ASMRを体験しやすい人の特徴として以下のような性格の人が該当するとも発言している。

新しい体験をいとわない人
神経症な人
精神的に不安定な人
頑固な人

あなたは該当するだろうか?

さいごに

ASMRは科学的にまだわからないことが多く、これから徐々に注目を浴びる分野だと思います。特に人のこころにどう影響するのかは心理学的に興味深いですね。

意外だったのが、ASMRは音意外に動作や興味などで体験している人が多いという点。
youtubeで動画をつくろうとしている人は、参考にしてみるといいかもしれないですね。

今後研究者たちの間でどういう議論になるのか要注目。

参考文献:Autonomous Sensory Meridian Response (ASMR): a flow-like mental state Emma L. Barratt and Nick J. Davis Department of Psychology, Swansea University, Swansea, United Kingdom

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